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歯科医院の分院展開に伴う留意点とは

[2017年01月01日]

開業当初、多くの歯医者がユニット2~3台から始め、将来のためにユニットの配管とスペースだけは確保しておき、患者数が増えてきたタイミングでユニット台数を増やしていきます。地方の医院では、隣の土地が空いていたりするケースがあるので、そういった場合は増築をし「拡張」を図り、どんどんユニットの台数とスタッフの人数を増やしていきます。しかし都心部では、土地の価格が高かったりそもそも土地やテナントが空いていなかったりするケースが多いので、中々「拡張」することができません。そういった都心部の歯医者が次に考えることと言えば「分院展開」です。自院の売上げが安定し、ユニット稼働率も頭打ちになってきた頃に、多くの先生方が「分院展開」を試みます。

私もこれまで多くの「分院展開」をサポートしてきました。その中で、分院展開をされた医院がその後多くの壁にぶち当たり、結果として経営の成長スピードが著しく遅くなってしまうケースを多く経験してきました。その成長スピードを妨げてしまう要因は次の3つからなります。

ひとつ目は「リソースの分散化」です。これまでひとつの場所にまとまっていた経営資源「人・モノ・お金・情報」が多方面に分散されることによって、医院全体としての総力が弱まってしまいます。ふたつ目は「患者の問題と願望の多様化」です。その地域の「特性」や「気質」が異なるため、これまで上手くいっていたことが上手くいかなかったりします。三つ目は「DNAの風化」です。物理的距離が離れてしまうことによって、診療所の理念やビジョンが薄れてしまうことがあります。

しかし、分院展開によって思わぬ果実が生まれることも確かです。売上げの増収はもちろんのこと、「①患者の新規開拓」、「②分院長やチーフの成長」、「③メンバーの自立」を見込めることができます。それでは、分院展開を上手く成功させていくためのカギはどこにあるのでしょうか。それは「コミュニケーション」です。

アメリカの経営学者であったチェスター・バーナードは、組織が成立するための条件として、「①共通目的(組織目的)」、「②協働意志(貢献意欲)」、「③コミュニケーション」をあげています。分院展開には、物理的距離が離れてしまうことによるコミュニケーションロスがどうしても生じてしまします。しかし逆を返せば、コミュニケーションロスの対策をしっかりと打てることができれば、より組織全体としての成果を最大化することができます。分院展開を考えられるのであれば、上記の点を事前に抑えられてみては如何でしょうか。