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歯医者の診療におけるアウトカムの重要性

[2016年12月01日]

私は幼い頃からむし歯が少ないタイプの人間でした。特に歯磨きを一生懸命していた訳ではありませんが、振り返るとあまり歯に困った経験がありません。しかし、大学時代にバイク事故をきっかけに歯医者へ通院し、結果歯を打ってしまった箇所には問題がなく、別の歯にむし歯があると診断されてしまい、私は何も考えずに安易な気持ちで治療をお願いし、パラのインレーを詰める治療を受けました。

今振り返ると非常に恐ろしい話です。歯科業界に足を踏み入れてから少なからずデンタルIQも高くなり、歯の重要性や尊さを実感している今、如何に日本国民が歯に対する健康意識が低く、歯を守るための教養が希薄かということを思い知らされます。それと同時に、日本国民が「知らない」ことを良いことに、きちんとした説明を怠ったり科学的根拠に基づいた治療を行わなかったり、経営を優先する診療選択をしてしまったりということが起きています。

そこで、何よりも患者さんに対して説得力を持たせることができるのが、診療におけるアウトカムです。簡単に言うと「この治療に関して私たちの歯医者では〇〇%の成功率です」といった様に、自院での診療結果がどういった状況なのかということを言える状態です。もしくは、アウトカムがなくともエビデンスレベルとして、診療の難易度や成功率が言える状態が望ましいですし、本来の医療はそうあるべきだと考えます。

しかし、「診療報酬制度」や「国民皆保険制度」といったルールがある日本において、このようなデータを蓄積、集計、分析、開示することは並大抵の苦労ではないことは理解できます。加えて、院長やその他スタッフも日々の診療や作業に忙殺されて、データの重要度が高いとは思いつつもそういった仕事に中々時間を割くことが困難であることも理解できます。ただ、やはり患者利益を考えた時においては、自院のアウトカムやエビデンスレベルが高い診療を提供した方が良いのではないでしょうか。

そこで重要なのは、スタッフ全員でアウトカムの重要性を共有した上で、データの蓄積をする「仕組み」を作ることです。仕組みを日々の臨床の中に落とし込み習慣化することができれば、無駄な時間やコストを掛けなくて済みますし、スタッフもストレスなくデータ入力に取組むことができます。先ずは自院としてどのようなアウトカムを出したいのか、そこから逆算して、データを蓄積するための仕組み作りをされてみては如何でしょうか。